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  • 岡村友章

脈々と、家族。


家族。やっぱり、なんにしても、暮らしの基本なのでした。

素敵家族、後藤家に会いに行った話。

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静岡県藤枝市「やまに園」に行った帰り、愛知県に立ち寄りました。

お目当ては豊橋市「ごとう製茶」さん。

少し前に常滑市を訪問したとき、その評判を聞きつけこれは行かなきゃ!と早速アポをとったのでした。

まず、愛知県にあまりなじみのない僕もびっくり。

茶園の近くまで来ても、車車…まさしく「轟」の大渋滞。周囲に山もないし、緑も特段見当たらない…

ただただ平地があるのみ。

本当に、本当に、こんなところに評判の茶園が?

と、疑心暗鬼なままに到着。

すると、まるでそこだけ他から切り離されたかのような農的空間が突如として眼前に。

おどろく岡村一家。

山もビルもないから、見上げればただ青い空。

なだらかな丘陵に広がる茶畑の黄緑とあいまって、木蓮の紅白がただただ美しい…

こんな茶畑の姿もあるんだ!と、大興奮の僕。

出迎えて下さったのは、ごとう製茶代表の後藤元則さんと、奥様の紀生子さん、

それからご子息の潤吏(ヒロサト)さん。(トップの写真で呈茶してくれているのが、潤吏さん)

僕がここを訪ねた目的はふたつ。

代表ご夫婦が力を入れている、番茶の一種「寒茶」と、

潤吏さんのつくる手もみ紅茶。

まずは「寒茶」のお話しをリポートしましょう。

寒茶とは、徳島の宍喰(シシクイ)、愛知の足助(アスケ)、そして長野の飯田などのものが

有名な番茶の一種です。けれどもコメが、ある地方だけのものではないように、

全国各地で自然に生えている茶を材料に作られてきたものではないかと思います。

元則さんと紀生子さんは、愛知の足助で寒茶と出会いました。

「産地」とされながらも、その実態は「絶滅寸前」なのだそうです。

観光地化された田舎体験施設で、地元のおばあちゃんがただひとり作っているのみ…

そんな状況を見かねた松下徹さんという研究者が奮起し、

寒茶づくり体験会など積極的に催すようにしているのだそうです。

後藤さんも、そこで出会ったのです。

つくり方をご紹介しましょう。

まず、1月に山に入ります。(酷寒の時期につくるから「寒茶」なのかな?)

そこかしこに自生している茶の枝を、おもむろに取ります。

それを洗浄して、翌日まで置きます。

翌日、枝ごと蒸します。

上の写真に写っているのが蒸し器。薪火で火をおこします。

しっかり蒸しあがったら、天日で乾燥します

※流通する多くの煎茶は乾燥のまえに茶葉を揉む工程がありますが

足助流寒茶は揉みません。

最後に、乾燥機にかけて完成です。超素朴なつくりかた。

これが完成品です。落ち葉みたいに、形がそのまんま残っています。美しい!

淹れるのも簡単。ヤカンで煎じてもいいし、急須にひとつかみ入れて

熱湯で出してもいい。

揉みこんでいないので、成分の出方が非常に穏やかです。

ゆっくりと染み出す感じで、いつまでお湯につけていても、渋くなりません。

これには「1月」という時期も関係しており、この時期は

カフェインやタンニンといった成分が少ないんです。

茶が酷寒を耐え忍ぶため、じーっと糖分を蓄えて頑張る時期。

なんだか滋養に満ちた、青くてさっぱりした味わいはやみつきです。

日常の、ふだんのお茶だから、いくらでもすいすいと飲みたくなります。

煎茶だと、飲みすぎたら胸につかえたりすることもありますが、

そうした引っ掛かりが全くないのが、僕の心を鷲づかみ!

ちゃっかり仕入れさせてもらいましたので、4月30日の「天王山ファーム&フードマーケット」で

皆さんにご披露いたしましょう!

ところでごとう製茶は、無農薬・無肥料のお茶を中心に作っておられます。

消費者としてはうれしい話ですよね。

寒茶のすっきり感は、肥料を切っていることにも由来するのかもしれません。

こちらが、元則さん。

畑の植生や虫たちのこと、自然のことにとっても詳しいお方です。

茶農家と思って会ってみたら、大間違い。

まるで小学生のころ、生物の授業でワクワクしながら先生の話を聞いたときのように、

彼の語り口は自然への愛情と興味にあふれているのです。

聞けば、高校生のときは生物部だったとか。なるほど!

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さてごとう製茶を含め、豊橋市では昭和30年代に紅茶づくりの盛んだった時期がありました。

しかし長続きせず、ごとう製茶がそれを近年に復活させるまで影を潜めていたのです。

背景には、紅茶の輸入自由化があったようです。

海外産の紅茶には、価格などで太刀打ちできなかったのでしょう。

それがいま、とってもおもしろい流れが起きています。

トップ写真のご子息・潤吏さんに、紅茶づくりのバトンが渡ったのです。

彼は多種多様な品種を畑で育て、それぞれが紅茶としてどのような特性を

表すか研究しています。31歳の若さを原動力に、あくなき探求心でもって

紅茶と向き合う青年。すごーーーく、楽しみでならない人物です。

彼が淹れてくれた紅茶。

な、なんじゃこりゃ!!透き通るようなのど越しに、繊細かつ力強い香り。

皆さんにとって「紅茶とは、こんな感じ」というイメージがあると思いますが、

彼のをいちど飲んだが最後、イメージが派手にひっくり返るでしょう。

僕は香味のリポートがへたくそなのでうまく言えないけれど、

ばつぐんにおいしい。これだけは、保証します。

聞けば、その紅茶とは昨年の「国産紅茶グランプリ」でグランプリの座を

ほしいままにした一品でした。あとからそれを知りました。失礼しました!!

こちらで、潤吏さんの活躍を知ることができます↓ グランプリだけじゃなく、金賞も取ってるぞ!

http://teafes.com/?page_id=1202

彼がすごいのは、そうした軌跡に甘んじていないところ。

しれっとグランプリのことを教えてくれたあとは、ひたすらに

彼の紅茶に対する思いを語ってくれました。

それらをここで書くよりは、もう飲んでもらうほかないと思います。

でも、それには彼の今年の製茶を待たなければなりません。

うまく仕上がらない量もかなりあるというので、

グランプリという華々しい成果の陰にどれほどの努力があるのか、

推し量ることすらままなりません。

彼の紅茶、今年どこかで絶対に淹れたい!

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最後にひとつ。

それは、後藤一家のこと。

創業は昭和ひとけた台で、もうずいぶんと長い営みを続けているごとう製茶。

いままさに潤吏さんへ、そのノウハウや歴史がそのまま継承されようとしています。

ご両親は、ただそのままに「継ぐ」ということを考えておられません。

潤吏さんのあふれるような探求心を決して邪魔することのないように。

彼がゆったりと紅茶づくりに時間をとることができるように。

そっと手を差し伸べ、まるで目に見えない支柱のように、

家族一体となって前を見据えておられるのです。

その結実がまさに昨年の紅茶グランプリでもありますが、

潤吏さんの軌跡は始まったばかりです。

息子のことを語るご両親のまなざしは、

底知れぬ温かみと慈愛に満ちていたのでした。

今回の訪問でいちばんよかったなと思えたのは、

このような家族の暮らしに触れることができた点です。

おもしろいのは、ご両親もまた強い研究意欲の持ち主であること。

「継ぐ」ことを意識しながらも、まだまだ彼ら自身にもやりたいことがあり

家族それぞれ、好き勝手やっているのが見ていて楽しい!

「家族で好き勝手やってますよ」と笑う元則さん。

僕も、娘を授かり子育てをしながらの身です。

家族の在り方として、後藤家のことは目が離せません。

お茶は、おもしろいなあと改めて思いました。

「茶縁」。

そう、お茶は元来、茶の間で人と人の間にあるものでした。

茶の間にあらずとも、茶を媒介としてたくさんの方と交わることができる幸せを

かみしめつつ、今日の記事を終わります。

いつもほんとうに長くて、スミマセン。


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