検索
  • 岡村友章

カフェインと向き合おう 1/2


 マーケットに出店してお客さまとお話する機会はたくさんありますが、そのなかでも特に多いのが「お茶とカフェイン」のこと。とりわけ妊婦さんや、小さなお子さま、そしてご高齢の方と同居しておられる方々から多く寄せられます。

 カフェインとはそもそも一体どのような物質で、その体に対する影響や摂取にあたりどんなことに注意すべきなのでしょうか。皆さんのご参考にして頂きたく、ここにカフェインについての情報をまとめました。ご活用ください。

1.カフェインとは

『茶の科学用語辞典』(日本茶業技術協会)によれば、カフェインは次のように定義されています。

  カフェイン caffeine

  茶葉中に含まれる覚醒、利尿、興奮作用をもつプリンアルカロイドのひとつ。コーヒー等の

  嗜好飲料にも含まれる。大変昇華しやすく、しばしば保存中に結晶が析出することもある。

 覚醒、利尿、興奮作用は特筆すべきカフェインの作用で、お茶が永い間、人類に利用されてきた根源成分と考えられます。1211年に栄西が著した『喫茶養生記』では「茶は養生の仙薬なり、延齢の妙術なり。山谷これを生ずれば、その地、神霊なり。人倫これを採れば、その人長命なり」、や「種々の薬は各々一種の病の薬なり、茶はよく万病の薬となる」といった記述があります。

 そのおよそ400年後に出版された李時珍の『本草網目』でも「茶は苦く、甘く、微寒にして毒なし。臓器(注* 陳臓器という人物)曰く、茶は苦く、寒なり、久しく食すれば人をして痩せしむ。また人の脂を去り、人をして眠らざらしむ」と、お茶の薬効が説かれています。

 このようにお茶が仙薬として重んじられてきたのは、お茶独特の成分であるカフェインとカテキンの存在と、それらが湯でよく溶出すること、そしてカフェインの薬効が飲用して直ちに現れることが背景にあります(お茶だけではなく、コーヒー、カカオ、マテ、ガラナ、コーラといった嗜好飲料にもカフェインは含まれています)。

2.カフェインが体にもたらす影響

 カフェインの薬効を具体的に見てみましょう。お茶を構成する成分のうちカフェインは1.6~3.5%を占めると言われており、その効果として「中枢神経興奮、眠気防止、強心、利尿作用、代謝促進」が挙げられます。

 カフェインは飲用後ただちに腸管から吸収され、成人の場合は1~2時間で血中濃度がピークに達する即効性の成分です。神経興奮作用により眠気、倦怠感を改善させたり、cAMPと呼ばれる成分濃度を上昇させることで心筋の収縮力増強・冠動脈拡張(強心作用)、脳細動脈の収縮(偏頭痛の鎮痛作用)、腎糸球体の流入血管拡張・尿細管の再吸収抑制作用(利尿作用)がもたらされたりします。

 吸収量が半減するのに血中では3時間、身体組織全体では5~6時間必要で、大半は肝臓で代謝され腎臓から排泄されます。ただし5,6か月齢くらいまでの乳児は代謝が未熟なために半減期が長くなり、それだけ中毒発生のリスクが高くなります。そのため、新生児、乳児、妊婦、乳児に授乳中の母親、そして肝機能に障害をもつ方々は、カフェインの摂取を控えめにすることがすすめられます。

 カフェインを過度の摂取することによる急性中毒は、不眠や、胃痛・吐き気などの消化器症状、それに心拍数増加や頻尿などの循環器症状が主です。カフェイン摂取を止めれば1~2日で症状は改善されます。

 長期的な影響としては、肝機能が低下している人にとっては高血圧リスクの上昇、カルシウムが不足している人にとっては骨粗しょう症のリスクの上昇(カフェインがカルシウムの体外排出を促進する)、または妊娠中の人にとっては胎児の発育を阻害する可能性があると言われています。なお子どものカフェイン摂取について、長期的なリスクに関する報告はありません。

 薬を使用している場合は、薬がカフェインの効果を強めたり、またカフェインが薬の効果を強弱したりする場合があるため、医師・薬剤師に相談することがすすめられています。

 なお吸収・代謝・排泄のプロセスは、空腹時の方が、食事時よりも速くなります。

3.カフェインの摂取量

 適切に摂れば好ましい影響も得られ、過度であればリスクも高まるカフェイン。結局のところどの程度摂取してよいのでしょうか。

 内閣府食品安全委員会が集約した各国のリスク管理機関の情報によれば、人によってカフェイン摂取の最大量は以下のように異なります。

  一日の最大摂取量

  妊婦 200~300mg / 日

  子ども 2.5mg / 体重 / 日

   (4~6歳) 45mg / 日

   (7~9歳) 62.5mg / 日

   (10~12歳) 85mg / 日

  健康な成人 400mg / 日

  *WHO、オーストリア保健・食品安全局、英国食品安全庁、カナダ保健省のデータに基づく

 この数値をひとつの基準としてみれば、これに相当するお茶の量はどの程度なのでしょうか。少し古い資料ですが、1969年に行われた調査結果の一部を以下に紹介します。

 ・玉露   → 1煎目 81.2mg 2煎目 37.8mg

 ・上級煎茶 → 1煎目 53.9mg 2煎目 24.0mg

 ・中級煎茶 → 1煎目 36.9mg 2煎目 16.6mg

 ・下級煎茶 → 1煎目 40.2mg 2煎目 16.9mg 

 ただし注意すべきは、上記のいずれのお茶も、「茶葉3g / 湯180ml / 100℃ / 2分」という条件で抽出されていることです。

玉露も煎茶も、「100℃で2分」という淹れ方は一般的でありません。とくに玉露は低温で淹れる場合が殆ど(カフェインは低温だと溶出が遅い)ですし、煎茶にしても1煎目から2分も蒸らすことは、通常はありません。そのため、実際には上記の数値よりもマイルドな溶出具合であると想定できます

 ここで、「結局のところ、どうなの?」という声が聞こえてきそうです。同じ茶種であっても、栽培方法や摘採時期によりカフェイン量は異なりますし、また淹れ方にも左右されます。人によりカフェインに対する反応も異なります。

 あまり厳密に考えすぎてもよくありませんので、ここでは茶種と淹れ方による、ざっくりとした傾向をお示ししておきます。参考になさってください。

カフェインが特に多い → 玉露

  カフェイン量 中間  → 煎茶、釜炒り茶、蒸し製玉緑茶、烏龍茶、紅茶

  カフェインが少ない  → 番茶、ほうじ茶、玄米茶

 カフェインは、若い芽に特に多く含まれており、かつ茶樹を被覆して栽培する場合、多く作られる傾向にあります。この条件に当てはまるのが、玉露です。煎茶の1.5倍程度のカフェインを含むとお考えください。

 「中間」に入るお茶には、著明な違いはありません。ただし、茶種によって標準的な淹れ方が異なりますので注意が必要です。例えば紅茶は高温で長時間蒸らすことが多いため、1煎目に含まれるカフェイン量だけを考えれば他よりも多いと思われます。煎茶の場合、低温で淹れる場合はカフェインが溶出しにくい傾向にあります。

 玉露とは反対に、番茶・ほうじ茶・玄米茶に使用される茶葉は、一般的には大きく成熟したものが多く、そのような茶葉は若い芽に比べてカフェイン量が低い(煎茶を100とした場合は、60程度)傾向にあります。ただし、ほうじ茶や玄米茶であっても、近頃は一番茶の若い芽を原料としプレミアム感を演出するものがありますので、その場合は相対的なカフェイン量は多いとお考え下さい。

 カフェイン摂取量が特に気になる場合には、番茶、ほうじ茶、玄米茶をあっさり目に淹れて楽しむのがよいでしょう。ほうじ茶や玄米茶であれば、茶葉がピンと綺麗に伸びているものではなく、「大きくガサガサしているもの」を選んでください。それが成熟した番茶の証拠なので、味わいもマイルドで飲みやすいはずです(多くの場合、ほうじ茶や玄米茶の原料は番茶です)。

 高温で短時間だけサっと淹れると、味わいはライトでも香りがのったお茶を作ることができます。お湯出しだけではなく、水道水を使って作る水出し茶もおすすめです。例えば茶葉10グラムに水1リットルをあわせて、冷蔵庫で一晩寝かせます。朝になれば茶葉を取り出して、そのまま冷蔵。低温の場合はカフェインが溶出しにくいため、苦みの少ないあっさりしたお茶が出来ますし、お湯出しに比べて茶葉に対する水量が多いためカフェインが薄まります。なお冷茶は、一日で消費しきることをおすすめします。

 いずれにしても、カフェインに対してアレルギーに相当するような敏感さを示す方や、ご高齢の方、妊婦さん、乳児、そして医師・薬剤師から特段の指示を受けておられる場合以外は、カフェインに対してあまり過敏になることは、おすすめしません。お茶に含まれるカフェインは普通に摂取するぶんには健康上気にする程のものではありませんし、そもそもお茶が人々に愛好されてきたのは、カフェインがあったからに他ならないのです。

---

以上、「カフェインと向き合おう」第一弾でした。

第二弾は、海外ニュースサイトで発見した記事を参照しながら、

そもそも「なぜ植物はカフェインを持っているのか?」「その利用方法は?」といったテーマを

考えてみたいと思います。

お楽しみに!

#お茶の成分

© 2015-2020 by にほんちゃギャラリーおかむら