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  • 岡村友章

政所で番茶をつくる


こんにちは。

昨日2018年3月19日は、滋賀県東近江市・政所(まんどころ)での番茶づくりに参加しましたので、今回はこのリポートをお伝えしたいと思います。

番茶(晩茶)は、ざっくりと言えば「大きく成熟した茶葉」です。新芽を中心に使う一番茶、二番茶、三番茶とは異なり、それら摘み期の合間だったり、あるいは秋冬や一番茶期前につくられています。

今回は政所での春番茶づくり。前年から冬を越したお茶が原料となるので、大きく固い葉が中心となります。

番茶といっても産地により全くキャラクターが異なります。ここ政所の場合は、番茶といえば「平番茶」(ヒラバン)と呼ばれるものを指します。

この形状の美しさも私は大好きで、茶畑からそのままやってきたかのようです。

ほっこりとした香りは普段使いにもぴったり。微かな酸味は食欲も増進してくれます。

この番茶は、どのようにして作られるのでしょうか。

私が仕入れ先としている山形蓮さんから「手伝って!」と声をかけてもらえたので詳細にリポートします。

訪ねたのは、蛭谷(ひるたに)といって山奥である政所のなかでもひときわ奥のエリア。

傾斜のある斜面に在来のお茶が植えられています。ここでは農薬・肥料を使用しません。

※在来種・・・人為的に交配を重ねて作り出す品種茶とは異なり、品種改良を経ず種から育ったお茶のこと。現在では品種茶への植え替えが進み、極めて少ない量しか流通しない。土地の気候風土に馴染み、病害虫に対する抵抗の強さが特徴。たとえばここ政所では豪雪の際に品種茶は雪の重さで折れてしまうが、在来種は枝をしならせて耐える。

お茶を刈ります。ひとりで茶摘機を持つのが山形さん。後ろに立つMさんは「政所茶縁の会」メンバーで、茶葉がどんどん貯まる重い袋を持ち山形さんの後を追います。

よく見るのは畝をまたがってお茶を刈る二人用の茶摘機。でもこの畑は畝の形が独特で、複雑に入り組むため大きな二人用機械は使用することができません。

茶摘みというと優雅な光景を思い浮かべるかもしれませんが、重労働です。その様子をビデオでごらんください。

足元には傾斜があり、しかもお茶の根が複雑に張り出すため危険な作業です。

ある程度袋に茶葉(と固い茎)が貯まれば袋を交換。茶葉は畑の上に停めたトラックに運びます。

硬化した茎もたくさん混じっています。この茎、大きなものは後で取り除くのですが、独特の甘みを持つために少し残されます。

これを集落の中心部にある茶工場へ運びます…でもちょっとその前に、畝間の様子をご紹介しましょう。

ススキが敷き詰めてあります。政所では伝統的に、肥料といえば「油かす」(この畑は無施肥)ですが、加えて落ち葉やススキを補助的に敷き詰めるのが慣わしなのです。

これらは冬季に茶樹を守る防寒資材になるだけでなく、マルチの役割も果たすので草が生えにくい環境をつくります。またやがて分解され土に還るため、土壌を豊かにします。ススキ由来のミネラルが豊かな味わいを生むともいわれていますね。すごい。

それから、もうひとつレアアイテムを。

これはお茶を刈る鋏です。あまり見ることのない道具ですが、政所では現役。おばあちゃんたちは驚異的なスピードで刈り、初めての人に比べると倍速だそうです。

茶摘機で刈りもらしたところを、私もちょっとだけこれで刈ってみました。

ちょっと寄り道しました。

いよいよお茶の加工ですよ。工場へ向かいましょう!

これは、蒸し桶。中に先ほど刈った番茶を敷き詰めて、高温で数十分じっくりと蒸します。蓋に「山形蓮」と書いた札がありますね。ここは共同の工場なので、いま誰の茶葉を加工しているのかがわかるようにして混同を防ぐのです。

蒸しの様子をビデオでもごらんください。

長いこと使われているこの桶、茶渋でみごとに風格が出ています。

蒸しあがったお茶はゴザのうえに広げて粗熱をとります。

さて、次がワイルドな作業「軸より」。まだ大きな軸(茎)がたくさん混ざっていますので、これらを選別する大切な行程です。

手前にジェットエンジンさながらの強風をつくる送風機があり、その目の前で蒸したばかりの番茶を空中に躍らせます。

軽い葉は奥に飛び、重い枝は手前に落ちる。葉を中心にあつめて、次の乾燥工程へ移るのです。私もこの作業をご一緒しました。葉っぱだの枝だのが容赦なく顔に飛んでくるので、ジャングルのなかをジェットコースターで飛び回るようです!(個人的には、すごく楽しかった)手は茶渋で真っ黒に。

この模様も、ビデオがあります。

この選別した茶葉は、粗揉機という機械を使って粗乾燥を。

そして棚式の乾燥機を使って仕上げの乾燥を行います。

ようやく政所伝統の平番茶が完成します。

でも、実はおいしく飲めるのは約半年後。私もさっそく出来立てを試飲してみましたが、販売しているものと異なりまだ青臭さが残ります。夏のころには、2018年の平番茶がお目見えすると思いますので、お楽しみに!

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こうして政所での一日を終え、山形さんから産地としての今後の展望などを伺ってから、帰路につきました。

やっぱり私は茶畑に赴いて、そこで立ち働く人たちに会うのが好きです。一緒になってお茶を運んだり、工場のにおいに包まれて話を伺ったりすると、体が元気になるのを感じます。

番茶というと「低級の、質の低いお茶」というイメージが先行しているかもしれません。現にお茶の辞典を確認すると、そのように書かれている場合もあります。

でも今日のお話をここまでお読みいただいた方は、もうそんなことは決してないのだとお分かり頂けたのではないでしょうか。

番茶には番茶の素晴らしい世界があります。

それを支える人々の営み。

茶刈り機の軽快な音。

汗を流す合間にもけらけらと談笑する瞬間。

蒸し器から立ち上るおいしそうな蒸気。

送風機の轟音。

乾燥中の茶葉がたてるサラサラとした小気味よい音。

できたての茶葉の肌触りと、半年後まで待つ楽しみ。

私は、番茶が大好きです!

#政所山形さん #番茶