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  • 岡村友章

つなぐ


京都・寺町商店街にあるお店 mumokuteki さんで、お茶の試飲販売会を開催しました。そのリポートです。

とても大きなお店ですからご存知の方も多いかもしれません。そんなところにペーペーの私が出入させていただけるようになったのは、何よりもまず長岡京市にあるB型就労継続支援事業所「バスハウス」の藤田さんと出会ったから。そして彼がmumokutekiの社員さんと引き合わせてくださったのです。

バスハウスさんでは素材までしっかりとこだわったお菓子づくりをきっちりとなさっておられます。お世辞抜きに、ちゃんとおいしいクッキーが私のお気に入りです。

もっとさかのぼれば、藤田さんとの出会いは「乾物屋スモール」の大坪さんが繋いでくださったのです。もっとさかのぼれば…とキリがありません。いやはや!

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何はともあれ、mumokutekiの社員さんたちは、いつも僕の話をきっちりと聞いてくださいます。お忙しいなかでも作り手・伝え手の思いを受け止めようと前のめりになって耳を傾けてくださるんですよ。

そういうなかで、僕だけでなく、ぜひ日本茶の生産者と直接つながってほしいという気持ちが湧いてきました。

誰よりも先に思い浮かんだのは、滋賀県政所の山形さんのこと。そもそも彼女のことは、写真にある飯田辰彦さんの著書「日本茶の『発生』」を読んだことがきっかけで知るに至りました。

同書のなかで彼女は、彗星のごとく危機に瀕した茶産地に現れ、その地域ブランドの復活のためまい進する地域おこし協力隊だというふうに紹介されています。著者・飯田さんの、温かな期待の眼差しを強く感じる内容で、私も「すごい人だなあ」とはじめは感服して読んでおりました。

その後ほどなくして、彼女と実際に会える機会があり、政所へ出入りするきっかけとなったのです。

政所のお茶はおいしい。それはもう、一度知ってしまったが最後。でも私が山形さんと一緒に仕事をしたいなと思うようになったのは、おいしさだけがポイントではありませんでした。彼女が飛び込んだ土地で奮闘するさまを見て、微力な自分だけれども何かできることがないかなと思ったのです。

お茶を飲む人が減り、高齢化も進む。担い手が不足するなかで、それでもここ政所でお茶をつくる人々ははっきりとしたプライドと自身をもって、今も政所茶という名前を誇りにしています。そこに単身飛び込んで、いま改めて生産者組合を立ち上げ、地域ブランドとして結束し活力のある産地にしようとする心意気に心を打たれました。同い年であることも、なんだか嬉しかった。

彼女は、「わしについて来い」タイプではありません。全方位に気配りを忘れず、どなたからも話を聞く。それはむしろ大変な道であるように私は思います。

とにかく応援したくなった。というか一緒に政所茶を、単に商業的すぎるあり方ではなく、温かみのある方法で伝えていく伝え手の一人として仕事をしたい!と意欲が湧きました。

それで昨年から彼女が手がける煎茶と番茶を仕入れて販売させていただき、また時には関心をもってくださる方を実際に現地へお連れし、五感で政所を知ってもらうことも始めています。いわゆるグリーンツアリズムに少し近いかもしれませんが、よりプライベートな雰囲気のなかで政所とつながっていく体験になっていると思います。物見遊山の観光であってほしくないのです。

※この画像はmumokutekiのFacebookページから転載しています

ともかく、そうしたなかで、mumokutekiでイベントをやろう!という話が自然発生的に出てきたのです。

生産者とお茶屋が並んで、試飲販売会。嬉しいことに、熊本県阿蘇の「満願寺窯」さんの器を使用させていただけました。作家の北川麦彦さんは、自然釉を手作りし、作陶しておられます。素朴で手のぬくもりがそのまま残った器は、まさしく政所のお茶との愛称がばっちりでした。

目玉となったのは「古樹番茶」。樹齢が50年を越えるような茶樹は、樹勢が衰えてしまうことがあります。そんなとき、政所では植え替えません。「台切り」といって、地際で樹を刈る。根は生きたままです。ふたたび茶樹が勢いを取り戻し、3年ほどして再び収穫できるように…

台切りした際の樹を、薪火で焙煎したものが「古樹番茶」。今回は長らく耕作放棄地であった土地のものが原料ですので、農薬はもちろん肥料も使われておらず、自然のまま。

この原料については別途書きたいこともありますので、追って詳しいご説明を記事にいたします。

※この画像はmumokutekiのFacebookページから転載しています

始まってみるとなかなか盛況であった時間もあり、生産者のリアルな話を聞ける貴重な機会にウンウンとうなづくお客さんたちの姿が印象的でした。私もその横で、生産者になったつもりでお話を。

不思議と、おなかや手足がゆっくりとあったまる古樹番茶。たいへん人気でした。

あっという間の二日間も終了し、山形さんは軽トラックで颯爽と滋賀の山へと帰ってゆかれました。

私は大阪にいる。ここにいるからこそできる活動があります。政所とお客さんたちの中継地点となるような立ち位置です。でも単に左右にお金と品物を流すのではおもしろくない。それなら誰だってできる。僕にしかできない仕事はなんだろうと思いますが、じっくりと考える時間も満足にとれないままばたばたとした時間が過ぎていきます。

でも振り返ってみますと、呼応してくれる方々が力強く応援してくれている。取材してくださったり、お茶を買ってくださったり、イベントを紹介していただいたり…

そうした縁のなかで、大きな川の上をざあざあと流されるようにして、えっちらおっちらと政所茶をそこかしこに持っていっています。

「おいしいですよね。これ、政所っていうところのお茶なんですよ。で、こんな若い女性が生産者で…」といつも同じような話を繰り返しています。

最後に、山形さん、そして北川さんと写真をお願いしました。

20代、30代、30代。この3人分の年齢を足しても、実はまだ政所で現役の茶農家であるおばあちゃん達には届きません。頭が上がらないうえに、政所のほうに足をむけて寝られません。

なお古樹番茶は、製造から4年が経過しはじめて世に出された商品です。生産量もわずかしかないのですが、私のもとでも扱わせていただけることになりました。

いずれ紹介したいと思いますので、準備している間いましばらくお待ちください。きっと、たくさんの方にお気に召してもらえると思っています。

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北川麦彦さんの情報もご紹介します。

満願寺窯

https://www.manganjigama-m.com/

https://www.facebook.com/kitagawamugihiko/

https://www.instagram.com/manganjigama/

自然の草木や野菜、茶などを原料とした自然釉を使用した器です。

端整で輪郭のくっきりした器というよりも、まるでずっと前から食卓にあったかのような自然な気配をまとったやさしい器です。

ランプシェードがたいへん美しかったです。


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