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  • 岡村友章

鉄瓶で淹れたら本当においしいのか。


こんにちは。

出店先でときどき尋ねられます。

「鉄瓶ってどうなんですか?」

鉄瓶で湯を沸かすって、なんだかいいですよね。お茶もおいしい…ような気がするものです。

私も南部鉄器のものをひとつだけ持っています。

「鉄瓶で淹れたらおいしい」ってよく言いますが本当でしょうか?もちろん、「おいしい気がする」という感覚は大切だと思っています。気に入った道具を使う喜びって、ありますよね。いい急須を手に入れたら、やっぱりおいしいって感じます。

それは「なんとなく」ではなく、お茶は味覚嗅覚だけで楽しむものではないからこそ。正しい感覚だと確信しています。

でも、私はお茶屋でもありますし、実験が好きなので…ちょっと空いた時間で比較実験をしてみました。そのリポートを今回はお届けします。

実験をする前に、ひとつ大切なことを。

鉄瓶のなかには、内側に照りのあるホーロー加工が施されているものがよく出回っています。

見た目は鉄瓶なのですが、実際には水が鉄と直接接しないため鉄は溶けださないと言われており、私はどうせなら鉄がむき出しになっているものをおすすめします。

ただし錆びやすいため手入れは必須。(手入れに関してはいったん割愛します)

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実験1.白湯

鉄瓶とティファールで湯をわかし、お茶は淹れずに白湯を飲んでみます。

鉄瓶 → 口当たりがかすかに軽く、角のないまろやかな印象です。

ティファール → わずかな塩素臭を感じます。ただし、しっかりと沸騰させることで塩素臭はほとんど抜けるのではないでしょうか。(沸かし過ぎると、きつい味になります)

この時点でまず第一に思ったことをひとつ。

そこまで変わりません。あんまり気にしすぎるのもよくないな、ということです。日常使いの範囲なら、鉄分補給を除き、鉄瓶でなければならない理由は、この時点では見当たりません。

もし目隠ししたなら、私はちゃんと正解できるだろうかと思いました。(そんなお茶屋があるか!と怒られるかもしれません)

実験2.煎茶を淹れる

政所の煎茶を淹れてみました。同じ茶器、同じ分量で。

鉄瓶 → 飲みこんだあと舌に残る、ざらっとした感覚が穏やかでした。この感覚はタンニンによる「収斂(しゅうれん)作用」といいますが、つるりとしたクリアなお茶になったという感じです。鉄とタンニンは結合しますので、そのせいか。

ティファール → 鉄瓶のお茶よりパンチのきいた強さを感じます。でもわざわざ比べたなら感じるな、という程度です。

この時点でハッキリと感じました。「鉄瓶で淹れると印象が違う」は正しいけれど、「おいしくなる」は誤りです。

つまり「おいしい」って何を指すのでしょうか?ということで、あなたにとってそれは、香りがいいこと?しぶ~いお茶であること?渋くないこと?

様々な方のお好みを販売しながら聞いていますが、みなさん千差万別です。渋くないのが欲しい方もいれば、とにかく濃い~のが欲しい!という方も。「おいしい」に絶対的な基準はないということを、改めて感じます。

実験3.蒸らしっぱなしにする

私なりの答えは先の実験で出ました。鉄瓶だと「なんだかうれしい」から「おいしい気持ちがする」。だけど、ベロで感じる味覚に限っていえば、「おいしい」か否かはあなたの好み次第。

でも、実験2で感じた違いを改めて明確にしたく、今後は「蒸らしっぱなし」を試してみました。ふだん飲むときには絶対にやらない方法なので、あくまでも実験です。

釜炒り緑茶を、3分ほど蒸らしっぱなしにしました。

結果、先の実験結果を支えるかのごとく「鉄瓶だと渋みが和らぐ」ことを確認できました。差異は実験2よりも明確に出たのですが、普段は緑茶淹れるときにこんなことをしないので、参考までに。

…しかし、ここに至って、番茶や紅茶なら3分ほど蒸らすことも珍しくないという当たり前のことを思い出しました。それなら、それも試してから実験を終えようと思います。

実験4.紅茶を淹れる

ラインナップに入れている水俣の紅茶を淹れてみました。

蒸らし時間は3分。

結果はやはり同じように、鉄瓶のお茶は渋みが少なく、ティファールのものだと渋みを感じやすいというものでした。

ここで一般に言われる「鉄瓶でお茶をつくるとおいしい」という考えと比較して考えてみますと、やはりそれは必ずしも正しくないと感じます。

私は、鉄瓶で淹れたものだと、なんだか表情がつるっとして物足らないように思えたからです。たしかに緑茶の場合には、鉄瓶のほうがすっきりとしておいしいかなと感じました。しかし紅茶に限って言えば、私がこの紅茶について好きだなと思っているキャラクターが、鉄瓶の水からはうまく生まれませんでした。

もちろんこれは私の感覚なので、人により違って当たり前です。

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まとめ

鉄瓶で淹れると、渋みが丸くなります。

それをおいしいと思うかどうかは、あなたの淹れ方、気分、そして好み次第です。

だから「鉄瓶で淹れたらおいしい」は、誤り。

ただし、道具として鉄瓶だけが持つ重厚な魅力は他に替え難いものがあります。単に味だけでなく、お茶を淹れるその時間の豊かさを思うと、鉄瓶は無二の素敵な道具といえるでしょう。

内側がホーロー加工された鉄瓶でも満足できるならば、それはそれということになりますね。あとはあなたが道具に対して持っている価値観次第ということになります。

私は、鉄がむき出しのほうが好きです。シンプルだからです。


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