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  • 岡村友章


満田久樹さんにお会いしてきました。

「日野荒茶」「日野焙じ茶」を当店に送ってくださっている、滋賀県日野町の茶農家です。

もうこのブログでも何度も書いた方ではありますが、彼のことを少し。

3代目の茶農家で、お父さんから継いで以来、無農薬有機栽培を続けています。また関西の単一農家としては最大規模の在来茶樹を守っている農家で、素朴な昔ながらの口当たりがするお茶を大切につくっています。

また自身も市場から茶を仕入れて販売する茶商でもあり、さらに各種コンテストの審査に携わったり、茶葉の委託加工を請け負って製造したりと、とにかく多彩な活動をまじめに続けている方。

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今回の訪問は、以前からお茶の販売でもお世話になっている乾物屋スモールの大坪まど佳さんと一緒でした。

そもそものはじまりは「満田さんのところの草刈りをしに行きたいね」とお話していたこと。そのままなんだかんだで行けず時間が経ってしまっていたところ…まど佳さんの「行こう!」が鶴の一声になり、8月30日に行ってきました。

さて生憎の雨模様。強く降ったりやんだりしながらすっきりしない一日です。とはいえせっかく来たのだから!と、ご自宅前の畑に入っていきます。

満田さんのところの場合、1町2反の茶畑を3人ほどで管理。温かく雨量のある時期は、茶畑に生えてくる草の勢いは圧倒的です。年間で5回くらいは同じところの草刈りをしなければ茶畑は維持できないという話でした。

ひとつは畝間に生える草。これは草刈り機を使って対応します。

もうひとつが茶樹に絡みながら伸びてくるツル性の植物です。ヘクソカズラ、クズ、そしてヤブガラシなど。手作業で畝からバリバリと引きはがします。

今回はツルの引きはがしをお手伝い。とはいっても雨から逃れながらなので、ほんのちょっとしか作業ができませんでした。

トップの写真は、茶樹と、そこからはがしたツルです。ものの数分の作業でこれだけ集まります。これの数十倍、いや数百倍の草を年に何度も取り払わなければならない。地下茎で殖えているものは地上部を刈ってもまた生えてきます。下手に地下茎を折ろうものならば、今度は二つになった地下茎のそれぞれからツルが…。

満田さんのところでは近年になってヤブガラシが繁殖。成長してヤブを覆い、枯らしてしまうことがあることからついた名前です。非常に繁殖力が強く、取っても取ってもどんどん伸びてくるといいます。

私は今まで、草とりの時期に茶畑に入ることがあまりなかったので、収穫期の「きれいな状態」しか見られていませんでした。それが今回の作業や、満田さんの日々の積み重ねの話を聞くにつれ、自分はなんと良いとこ取りをしてしまっていたのだろうと反省。

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そもそも満田さんが無農薬に切り替えたのは、お父さんの代に体験した農薬散布の際の出来事がきっかけです。散布するときに「危ないから外に出たらあかん」とお父さんから言われたり、散布しているときにご近所さんが洗濯物を取り込むのを目の当たりにしたり…

無農薬に転換して数年は茶樹がぼろぼろになり、まともに収穫できるようになるまでかなりの年数がかかったそうです。それでも満田さんのところは茶商としての仕事もあるし、設備投資もおおよそ済ませていたので、なんとかやってこれたといいます。

しかしヤブガラシがあまりにも旺盛なので、満田さんも近年は重労働が積み重なり思い悩む日々。畑を続けていくために除草剤を使うという選択肢も頭をよぎるそうですが、満田さんは、最後のギリギリのところまで使わないやり方を模索するだろうなと私は思っています。彼と会って話をしていれば、そう感じます。

そして同時に、これは満田さんだけがただ我慢して対応すればいい問題ではないと確信しています。いままで30年近くも続けてこられたことがどれほどに奇跡的なことか、そしてそんなお茶が気軽に飲めることがなんと有難いことか…

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休憩にはスイカや水出し茶を出してくださり、お土産として持参した cafe nenem の焙じ茶アイスクリームにもみんなで舌鼓を打ちました。材料に使っているのは、もちろん満田さんが焙煎してくれた在来ほうじ茶です。「おいしいな!」と喜んでくださいました…よかったね、雅里さん!( nenemの店主 )

それからは夜も更けていき、遅くまで満田さんとまど佳さんとでお茶を囲んでお話を。どんなお茶が残っていくべきか。どうすればお茶をみんなに飲んでもらえるか。

そろそろ帰ろうかな、という頃になってからが長いのが満田さんのところでの滞在。満田さんって、寡黙な印象を最初は受けるのですが、心では本当に様々な問題に気持ちをよせている方で、お話の尽きることはありません。

この人のお茶を飲めて僕は本当に幸せです。おいしいし、彼の人柄をそのまま感じるから…

強い執念すらも感じる長年の無農薬栽培ですが、環境の変化にともなって継続の困難さは増しています。満田さんに感服するとともに、これからは彼のようなお茶をつくって世に届けている人たちには私たちからアクションを起こし、「お金とお茶の交換」ではなく「一緒に守っていく」という姿勢への転換が絶対に必要だと痛感した一日でした。

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また、「草」に関しても考えることがあります。草はなぜそこに生えているのか。なぜ特定のものが突然殖えてしまうのか。刈る人はいないのに、なぜ同じものだけが山を覆ってしまうことがないのか。

そう考えていると、茶畑で他を圧倒している植物はヤブガラシではなく茶に他ならないことに気が付きます。茶が優位な状態を人為的に維持した風景。これは人がいなければ有り得ないから、反動的に「戻ろう」とする自然の力が働くはず。この力に農薬で抗うことをせず、続けてきた満田さん。

今後、この件についてはしっかりとフォローを続けてまいります。ぜひご関心をお寄せください。


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