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  • 岡村友章

援農 01 / 世界は変えられる


援農。関わり、一緒につくる。その取り組みがいよいよ動き始めましたので、そのリポートと今後のお誘いをお届けしたいと思います。

きっかけは取引先の農家が廃業したこと。それを僕は止めらず、ひとりの力では何もできない自らのちっぽけなことを思い知りました。

飲みたいおいしいお茶を一緒につくるのです。お金と引き換えに製品としてのお茶を享受するばかりではなく、実際に茶畑に足を踏み入れて話をし、関わり、おいしいお茶を一緒につくりだす。

生産と消費の分断を埋めるため、みんなで茶畑に行こう。一緒にやりたい人がたくさんいることを手足を動かして伝え、農家に希望を持ってもらおう。

その気持ちが大きくなり、「乾物屋スモール」のまどかさんともお話を積み重ねて大いに背中を押してもらえました。そうして、援農の取り組みをスタート。

お声がけしたのは滋賀県日野町の満田久樹(みつだ・ひさき)さん。無農薬有機栽培を1997年から一町ニ反の畑で継続している三代目の生産者で、やぶきた種のほかに在来種を多数残している稀有な存在です。当店では「日野荒茶」「日野焙じ茶」を扱っています。

「みんなでわいわいと一緒にお茶をつくる。そういうことは、ずっとやってみたいと思ってきました。ぜひお願いします」とすぐに前向きなお返事をいただきました。無農薬に転換してからというもの、ダメージを受けた茶畑の回復に10年。彼のその苦労を知っているだけに、嬉しい反応です。

Snip! のお二人も呼びかけに大いに力を貸してくださり、「行ってみたい!」と仰ってくれる方の数があっという間に膨らみました。私もこれにはびっくりで、いきなり希望の光が射しこむのを感じつつ名簿を整理。

11月17日にいよいよ第1回目の援農を決行することになりました。私を入れて6名。急きょご参加が難しくなった方々もおられたので、実際は10人を超えての訪問となる予定だったし、別の日なら行けると言ってくれた方はさらにたくさん控えていました。これには私も驚いています。

第1回目の援農は、草とりです。

冬も目前となりすでに草の勢いは弱まったものの、ヤマイモやスズメウリなどのツル植物が茶樹に絡まり、ササが合間から顔を覗かせ、多数の落ち葉が樹に乗っています。畝間の草のような草刈機を使った対応ができないので、人海戦術で取り除いていく作業。蜂がまだ元気よく、彼らの採蜜を邪魔しないように気を付けながら。ちょうどお茶の花が咲いている時期なのです。

雰囲気はしんと静まり返って、黙々と各自が茶と向き合う時間のはじまりです。機械を使わないので、風、烏の鳴き声、そして体が茶とこすれるガサガサした音だけ。

「無農薬にしてからは、虫に食われて樹が枯れていく日々。どうしようもなく、かろうじて摘めた葉で焙じ茶をつくってました。家業は生産農家としてだけでなく、別に茶商としての仕事もあるので何とかやれたんです。生産一本の人に、無農薬への転換はとてもやないけどすすめられへんね。」

そう語った満田さんの苦労が実り、土が肥え生態系が回復。元気な茶樹が並ぶのを愛でながらの作業。何も考えずに淡々とした時間が過ぎていきます。風が気持ち良い。

「お父さん、12時〜」と奥さんが家から呼びにきました。あっという間に昼食の時間。昼食は各自用意してくることになっていました。すると満田さん、私のほうへ寄ってきてこっそりとこう言いました。

「岡村くん。バーベキューしたらみんな食べてくれるかなあ」 「え(歓喜)、でもお昼ご飯はみんな持ってくることにしてたし、​それに準備も大変でしょう…そりゃもちろん、みんな喜んでくれるとは思いますけど…モゴモゴ」​

「せっかくこんな機会やし、みんなでわいわい食べたほうがいいかなと思って…火起こすからちょっと待っててもらわなあかんけどね。それぞれ持ってきれくれてるものもつまみながら。うーん、ちょっと家族と相談するわ」

そう言って家のほうへ行ってしまった満田さん。しばらくすると、風に乗って香ばしい炭火のにおいがしてきました…BBQ!

近所のお肉屋さんから買ってきてくださった牛肉と、近所の農家さんたちの野菜、それから日野町特産の日野菜の漬物。もちろん満田さんとこのお茶も。満田さんのお母さんや息子さんも途中から混じって楽しい時間。

食後はいろいろなお茶を飲み比べ。5年前の煎茶も登場し、古い臭いがなく今もおいしい風格に一同驚き。「ふつう、5年も煎茶は保存できません。脱酸素をして冷蔵しても、どうしても古い臭いがつく。土から大切に栽培していると、それとは違う結果となる。5年前のなのにうまいでしょ」と満田さん。

「試しに」といってアミノ酸(旨味添加)と重曹(色彩保持)を添加したお茶が登場。自然なお茶と、味付け・発色させたお茶の違いを実際に確かめます。添加したお茶を一口、「会社の応接とかで馴染みの味…」と仰る方も。実はたくさん出回っているのです。

そして今度は焙じ茶をその場で炒る即興の体験会が始まりました。みんなでやってみたあと、満田さんの実演。さすがの仕上がりに一同びっくり。 ​​

さらに、火入れ・裁断・選別・合組(ブレンド)などの仕上げ加工を行う工場もご案内くださりました。はじめて見る大型の製茶機械の数々にみなさん興味津々。満田さんの説明にもいつもに増して熱が入り、いい雰囲気です。 ​​

そうして残りの時間は、再び畑に戻って作業を続行。飲み食いした分だけ働かなければ!

このとき、今までに見たことのなかった光景に出会いました。満田さんのふたりいるお子さんのうち、中学2年の息子Hくんが畑にやってきて私たちの写真を撮ってくれたりしています。年頃の男の子だしちょっと恥ずかしがりながら。

継ぐ、という話を私はまだ彼とすることは出来ませんし、あまり今はそこに突っ込まないほうがいいのかなと思っています。でもこうして父である久樹さんの仕事ぶりに呼応して集まる若い人たちの姿をみて、Hくんなりの父親像に新しい一面が生まれてくれたかもしれないなと感じています。「…ひょっとして、おれのおやじってスゴイのかな」なんて思ってくれていたら嬉しい。 ​​

5時前まで作業を続けて、草がどんどん集まってきます。

これを見た満田さん「これだけやってもらったから、来年の春番、やってみようかな」と一言。「春番(はるばん)」は「春番茶」のことで、秋冬を越した茶葉を3月に刈り取ってつくる素朴な番茶です。春番茶には、茶を刈りならして一番茶がきれいに出そろうように剪定するという意味合いもあります。

例年なら春番茶の時期には前年からの草が残っていて、飲用のお茶として加工せず、ただ畝間に刈り落しておくことが多いそうです。でもこうして今のうちに草をとっておけば、あとは冬がやってきてもう繁ることはありません。

「今回のようにみんなで集まってお茶づくりをご一緒する取り組みは、続けてもいいですか」と尋ねると、「ぜひお願いしたいです。実は長年ウチに手伝いに来てもらっているおじさんもだいぶご高齢やし、もう無理は言えへんなと思ってたからね。お茶の作業はきつい部分もあるからシルバー人材センターにお願いしても断られてしまうことが多いし、こうして若い人たちが来てくれはるのは、嬉しいです。春番茶のときには機械で刈るから、そのお手伝いをしてほしいです」と満田さん。

「こんな作業をやるだけなのに、ほんまにええのかな」と仰いますが、「毎日こういう作業にあたらないといけない茶農家の方々とは違って、都市に住んでいると茶畑そのものが貴重だし、そこに入って作業を一緒にやるなんてまたとない体験です。お金には替えられない価値があって、喜んで来てくれる人たちがたくさんいます。農家さんたちが直面している現実を生の感覚で知って、また自分なりにみなさん思うところがあると思います。本当にいいものは、お金さえ払えば買えるという訳ではないことを知ってもらえます」と答えました。

どことなく満田さんの心に、温かい火が灯りました。心あるみなさんのおかげで今日の援農が実現し、農家も参加者も喜んでくれている顔を見ることが出来ました。

別れ際、いつもは出てこないHくんも表に来て見送ってくれました。この家族に幸がありますようにと祈りながら、そして祈るだけではなく関わることで、その一助になることができたなら。

もう世界は違ってきていると、そう思いました。

しんどくて、人手もなく辞めていく農家の背中を見なければいけなかった昨日までとは違いました。何かいいことが起きるぞと、希望の種をまくことができました。

同じ悲しい景色を見続けるのが嫌なら、足さえ動かして視界を変え、見えているものに声をかけ、触れ、会話してみること。そのとき世界の見え方は、さっきまでとは全然違っている。その先の景色が見たい。

11月18日早朝。

一夜明け、雲がただ一つもない美しい朝焼けを横目に今日の記事を書きました。大好きな高木正勝さんの音楽を聴きながら。もう昨日までとは少し違う世界に暮らしています。

満田さんも今頃、日野の空を見つつ同じことを思ってくれていたら嬉しいなと思います。

きっと、少しずつでも世界は変えられる。あなたさえ動いてくれれば。

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