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  • 岡村友章

荒茶を手にこれからのお茶の話をしましょう

最終更新: 5月2日


こんにちは。

前回の記事「在来種のお茶と満田さんの話」では、お茶の在来種ってどんなものなのかと、それを守っている農家・満田さんの話をリポートしました。

今日は当店で扱っている満田さんのお茶のなかから「荒茶」についてご紹介します。(焙じ茶はさらに次回!)

これからのお茶って、こういうものが当たり前だといいのになと心から思っているものです。

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前回お話ししたとおり、満田さんのお茶は「在来種」。種から育った実生のお茶で、挿し木により殖やす遺伝子が同じ「品種茶」ではありません。商業茶園としては1%ほどしか残存していません。

農薬を20年以上使用しない日々の努力を重ねておられます。このような条件の在来茶園としては、さらに面積が少ないことが想像されます。

これが在来種を100%使用した荒茶(あらちゃ)。

当店では先月より「日野荒茶」という名前で紹介しています。

「荒茶って聞いたことがないけれど、見た感じでは煎茶と同じじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。よく似ていますが、違うものなのです。

煎茶は、こんなふうにつくります。

茶葉を蒸す→揉みこみ→乾燥→仕上げ(切断・ふるい分け・選別・火入れ・ブレンド)

荒茶は、こんなふうに。

茶葉を蒸す→揉みこみ→乾燥

お気づきのように、「仕上げ」をしないものが「荒茶」です。農家のもとでいったんの乾燥工程を終えた荒茶がつくられて、茶商に渡ってから独自の仕上げを経たり、ブレンドを施されたりします。

見た目がよくなかったり、

長期保存に向かなかったり、

荒茶はブレンドの原料だから単一農園産の状態では出回らなかったり、

という理由から、荒茶が一般に出回ることは多くありません。とくに「見た目」の部分が重要視されることは満田さんからも伺いました。

ところが満田さんは、ちゃんとこの点について香りと味本位の感覚をお持ちです。つまり、「見た目がきれいに整っていること」が、よいお茶を意味するのではないということです。

もちろん私は、高価でキレイに形の揃ったお茶の美しさや、または産地ごとに独特の手法が残る手揉みのお茶の文化をまで否定したいのではありません。そればかりがいいお茶というわけではないのですよ!というお話をどうか知ってほしいのです。

満田さんの荒茶は、お茶本来のなつかしい味わいがそのままに生きていて、何煎淹れても雑な味がしない優しい飲みもの。緑茶はむかむかするという方も多くいらっしゃるのですが、きっとコレなら大丈夫。

これには、在来種100%であること、無理に肥料を多投しないことといった栽培環境のほかにも2つの理由があると思っています。

① 茶葉を切り揃えない

② 独自の「仕上げ」を行う

まず①について。

形を整えるためにお茶を切りそろえると、当然ながら味が強く出る傾向にあります。コーヒーを思い出してみてください。細かく挽いた粉のほうがしっかりとした味わいになりますよね。

荒茶は切断面積が少ないので、煎茶と比較して2煎目以降の香味のバランスが変化しにくいと感じています。

それから②について。

荒茶は仕上げを行わないと書きましたが、満田さんから特別に送ってもらっている荒茶は、実はちょっと別物なのです。

粉をふるい落として、茎を抜きとります。こうして雑味が出ないよう味わいを整えるのです。まだ手摘みが主流だったころは粉や茎が荒茶に混じることは少なかったのかもしれませんが、いまは機械で摘むのが一般的です。

それから先に書いたとおり、荒茶は長期保存に向きません。乾燥が不十分なので、質の落ちるのが早いのです。

そのため満田さんは、火入れ乾燥を行います。しっかりと水分を抜き「焙煎による香ばしさ」ではなく、お茶の味わいを引き出してあげるための工程です。香ばしさはほとんどありません。

こうして出来上がるのが、満田流の荒茶。

一般的な荒茶とは違って、「粉や茎は抜き取る」「長期保存のため火入れ乾燥を行う」ところは異なりますが、お茶の切断をしないことで在来種の持ち味である、素朴でスッキリとした印象を際立たせることができます。

満田さんもこのお茶が好き。昔ながらのお茶と評されます。

「見た目はよくない」とされるようですが、私はむしろ、工程を一部省くことで魅力的な外観だなあと思っています。整っていないからこそ、原料のよさをそのまま味わうことができる。この満田流の荒茶では、昨今のお茶において重要視される「旨味」はあまり感じることがありません。

どうぞ一度ご賞味ください。

このようなお茶こそが、これからの暮らしに必要だと私は考えています。熱い湯でさっと淹れられて、すっきりと雑味もなく3煎くらいはおいしく楽しめるもの。小さな子どもだって全然だいじょうぶです。

「冷まして丁寧に淹れる」こともお茶の楽しみかもしれませんが、それがすべてではありません。

荒茶。名前は何だか荒っぽいけれど、ここには満田さんのお茶に対する哲学がぎっしりと詰まっています。

「子どもが安心して飲めるお茶をつくりたい」と語る彼ならではの明確な「理念」、これを支える祖父から受け継ぐ「在来種の茶畑」、そして確かな「製茶技術」。彼の茶工場は委託加工を受け付けている生葉の集積所であるため、様々な原料に対して適切に対応することが求められている役割もまた、彼の製茶技術に大きく利しているのでしょう。

流行り廃りとは一線を画したところで、満田さんは今年もちゃんとしたお茶を作られます。私も彼の想いをきっちりと伝えていかなければと、お会いするたびに心に刻むばかりです。

次回は彼の焙じ茶についてお話をさらに進めていきましょう。お楽しみに。

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商品情報

「日野荒茶」

滋賀県蒲生郡日野町 満田久樹さん作

在来種一番茶100%

平成7年より無農薬有機栽培

120g 1,000円


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