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  • 岡村 友章

気の毒カフェイン


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Illustration by Freepik Stories


妊婦さんでも子どもたちでも、お茶は常識的な範囲で飲んでも大丈夫ですよ、カフェインをそこまで怖がらなくてもいいですよ、という話です。


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昨日、カフェインを避けているという女性が訪ねてこられました。小さなお子様がおり授乳中。ひとまずは番茶のラインナップを紹介しましたが、このようなときに私は必ず伝えていることがあります。


「お茶のカフェインを怖がらなくても大丈夫です。何杯も何杯もがぶ飲みする訳ではないですよね。それだったら無理に番茶にしなくても、緑茶など楽しんでもらっていいんですよ」


その方は最初、疑心暗鬼になっていました。無理もないと思います。妊婦さんのための情報を少し調べれば、たちどころに「多量のカフェインは避けるべき」という記事を無数に見つけることができます。


中には「日本茶は△」とひとくくりにするものもあり、専門店としては見過ごせない場合も。商売の邪魔になるという意味ではありません。小さい子どもを守るべくして生活している人たちに、日常の飲み物のことくらいで無闇な心配をさせ、必要のない精神的な負担をかけてはいけないのです。


外を出歩けば「カフェインレス」や「ノンカフェイン」と大きくうたう商品はいくらでも見つけることができます。私もまた例外ではなく、三年番茶などがカフェインをほとんど含まないことを積極的にお伝えしています。しかし、ともすればそれは「カフェインは一切摂るべきでない」という極端な印象を与えてしまう危険を持ちます。


ただ、これらカフェインにまつわる情報が保護者の方々のなかで一人歩きしているように思えてなりません。カフェインは一切摂っちゃダメという主張はさすがに見つけることが難しいものですが、それでも「念のため避けておこう」というソフトな感覚でいらっしゃる方がほとんどです。それだけに、なぜ摂ってはいけないのか、摂取量の制限はどれくらいか、といった情報を把握している方はそう多くないと感じます。


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昨日お会いしたお母さん、よく話を聞いてみれば心からお茶が好きだそうで、妊娠するまでは日々お茶を楽しんでいたという話。なんだか気の毒になってきました。


「カフェインを本当に避けなければならないと、お医者さんから言われたことはありますか?」と私が聞くと、「いや、それはありません」と仰いました。


「私は医者ではありませんが、煎茶や紅茶でも、日々の楽しみ程度になら飲んでも大丈夫です。もちろん、できるかぎり調べたうえで言っております。それに、茶葉の量や蒸らす時間をコントロールして、穏やかにすることもできます。煎茶、試しに飲んでみますか」


ということで、満田さんの煎茶を淹れました。茶葉は少なめ、蒸らす時間はちょっと短め。こうすれば1杯に含まれるカフェイン量は少なくなります。


一口飲んで、お母さんの表情はさっきまでと全然違うものになりました。「おいしいー!」と喜びいっぱいで、我慢していたものがほぐれる感じ。お母さん、とても我慢していたことがよくわかるお顔でした。マスクをとっていっぱいに笑ってくださったのがとっても嬉しかった。


「残っているの、もらってもいいですか」と、お淹れした分をほとんど飲んでくださいました。


お母さんは番茶ではなく満田さんの日野荒茶を連れて帰ってくださいました。本当によかったと思います。アルコールならまだしも、日々のお茶くらいのことで我慢を続けるのはとても辛かったのではないでしょうか。


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ではお茶のカフェイン量はどれくらいで、どの程度気をつけなければならないのでしょうか。参考にしたのは、内閣府食品安全委員会の公表しているファクトシートです。

( ⏩「食品中のカフェイン」)


ファクトシートに掲載されている食品別のカフェイン含有量は、実際の飲食シーンとは相容れないものであるため、ざっくりと計算してみました。


一息いれたくて、ちょっとひとりでお茶を淹れる場面を想定してみます。このとき1杯のお茶に含まれるカフェイン量は…


煎茶4g ⇨ 約30mg

紅茶3g ⇨ 約60mg(試料として使われた茶がどのようなものなのかわかりませんが、国産のもので計測すればもっと少ないのではないかとおもいます)


こんな感じ。細かい数字は記事をご参照ください。カフェインは短時間で多くが溶け出すため、2煎目以降はぐっと浸出量が少なくなります。3煎くらい飲んだなら、ほとんど溶け出したといって差し支えないでしょう。


ざっくりと言って、若くて柔らかい芽のお茶(玉露、かぶせ茶、煎茶)はカフェインを比較的多く含み、硬くてざくざくしたお茶(番茶、焙じ茶)は含有量が少ないことを覚えておくと役に立ちます。


そのうえでファクトシートを参照すると、各国の公的機関のアドバイスが掲載されています。ご自身でご覧になってみてください。何はともあれ、よほど茶葉を何度も入れ替えて飲むのでない限り、別段の心配はないと確認していただけるはずです。


もちろん代謝能力の小さい子どもに飲ませる場合は、ご自身よりもさらに少なくするべきです。(もっとも、習慣的に熱い煎茶を何杯もがぶ飲みさせるということは、ふつうないと思います。)また、少し飲んだだけで眠れなくなるという方もいらっしゃいます。その人にあった飲み方は、その人自身の体感で考えるのがいちばん良いのではないでしょうか。


そういえば私の場合は、寝る前にお茶を飲むとほっとして、むしろよく眠れるくらいです。お茶にはテアニンという成分が含まれており、カフェインによって引き起こされる中枢神経の興奮を抑制する作用があります。そのため、お茶に含まれるカフェインが引き起こす興奮作用よりも実際に体に現れる興奮は小さくなるのです。


それにしても世界中で親しまれている嗜好飲料のお茶とコーヒー。共通するのは、いずれもカフェインを含むということです。


その強心・覚醒作用がもつ魅力もまた、人がこれらの虜になった理由のひとつに違いありません。お茶ももともとは日本に薬として導入され、仏教徒の間で日々の眠気を冷ます妙薬として使われたといいます。


付き合い方次第です。自分で調べてみること、そして自分の体が何を言っているかに耳を傾けることのふたつが大切ではないでしょうか。


カフェインは、時代によって好まれたり、避けられたりするようです。ちょっと気の毒。

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