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  • 岡村 友章

葉を見たら人がわかる


こんにちは。

昨日は、私がはじめてお会いした茶農家である北田耕平さんのことをお伝えしました。


今日は、ラインナップ中ではその次にお会いした方である満田久樹さんのことを改めて。日野荒茶・日野焙じ茶・粉末緑茶の生産者です。


まずは3つのお茶について簡単に振り返ってみましょう。以下にご紹介するものは、すべて25年以上、無農薬有機栽培です。



日野荒茶は、いわゆる煎茶。茶葉を蒸して、揉みながら乾燥することでつくります。そのあと粉や茎を選別除去し、形を整える切断加工、そして保存性・香味向上のために火入れをして仕上げ乾燥を行うのが一般的。


当店の場合は、選別のあと、切断加工をあえて省き、火入れしたものを満田さんから特別に送っていただいています。やぶきた種と在来種を育てる農家ですが、日野荒茶には在来種を使用。すべての理由はおいしいと思うからです。



日野焙じ茶は、荒茶と同じ在来種を使用。「砂炒り」という手法で焙煎します。海岸のような細かい砂を高温に熱し、茶葉と混ぜることで全方位から火を一気に入れます。コントロールが非常にむずかしい代わりに、香りの発揚はばつぐん。「滋賀では、ウチがかなり早くから焙じ茶を作っている」と自負する満田さん、流石の腕前といったところです。



粉末緑茶は、在来種ではなくあえて「やぶきた種」の粉末を使用しています。理由は、こちらの方が味わいにパンチがあり、菓子などの原材料として適していると考えたからです。大山崎の fuminote さんがこれを使用して焼いてくださっている緑茶のクッキーは絶品ですよ。


以上、まずは宣伝させていただきました。


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満田さんは、私の母方の祖母が生まれ育った滋賀県日野町で営農しています。私も幼少期から何度も訪ねているのどかな田舎なので、飯田辰彦さんの著書「日本茶の『発生』」に彼が登場したとき、縁を感じて電話をしてお茶を取り寄せました。


同書で語られる彼の人となりは魅力的でした。


彼はお父さんから畑を継ぐときに、「在来種を手放し、栽培管理や市場価格で有利なやぶきた種に植え替えること」を提案されましたが、それを断りました。子どものころから体が受け付けるのは在来種だと彼は知っていたからです。


あわせて彼は、「危ないから近寄るな」とお父さんに言われてきた農薬散布をきっぱりやめて、化成肥料のかわりに有機肥料だけを使うスタイルに転換します。「なんとかなるやろ」とタカをくくったためにその後で大変な苦労を続けることになるのですが…。


彼の選択した農業は、当初から市場で受け入れられるものではありませんでした。在来種は芽吹くのが遅いから新茶の競争で負ける。そして無農薬に対する世間の関心は高くなく、価格もかなり据え置いて販売し続けてきたのです。無農薬なら売れる、なんてことはまずありません。


それでも彼は農薬と化成肥料を使わない在来種を、今でも守っています。あまり儲からないのに。


とはいえそれを地道に続けていられるのにはひとつ理由があります。彼が代表である満田製茶は、お茶を市場から仕入れ小売り向けに販売する卸売り業も昔から行っているのです。これが自園の農業をなんとか支えていると彼は言います。


このことが、他人がつくった見本のお茶を無数に見て質を判断する目を、長い時間をかけて培いました。


印象的な話があります。


「こう、ずらーっと並んでいる見本を見とったらね、『あ~、このお茶はこういう人が作ってんねやろなあ』って、わかるんですわ。見た目にはいいけれど、実際飲んでみたらあんまりよくないお茶もありますし、見た目にはなんかちょっと雑なお茶でもね、飲んでみたらこれがなかなかええお茶やったりする。それで、実際生産者に会ってみると、やっぱり思ったとおりの人柄。茶葉を見たら、会わなくても人柄がなんとなくわかるんです」


お茶というものは、畑での栽培管理のあと収穫して終わりではありません。製茶というダイナミックな工程があり、確かに人柄をはっきりと映し出す鏡のようなものなのかもしれません。私にはまだそんな目はありませんが。


しかしひとつ思い出すのは、阿蘇の東さんです。もう廃業なさった釜炒り茶の生産者ですが、彼の工場はものすごく古いのにも関わらず、驚くほど清潔に整えられ、几帳面にメンテナンスされていました。実際にお話を伺う際の彼の人柄は、たしかに工場で感じるものと似通っていました…。


満田さんは、私が最も頻繁にお会いしている農家です。比較的私の家からアクセスがよいこともあり、また私は彼がちょっとぶつくさ言う感じの語りが好きなのです。初めてお会いしたそのときから今に至るまで、なかなか他では聴くことのできない話を打ち明けてくれる人でした。その話の幅はこのところどんどんと広がっており、つまるところ彼が長年胸に秘めてきた商売や農業、そして人間に対する気持ちがいかに高く積もり積もってきたのかを感じます。


農業は孤独なのかもしれません。だから私は彼の仕事と人となりに惹かれるのではないかなと、最近になって思うようになりました。



商品情報


日野荒茶(120g)

日野焙じ茶(100g)

在来種 無農薬 有機栽培


粉末緑茶(50g)

やぶきた種 無農薬 有機栽培

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